ナビゲーションのスキップ

ZF Marine 社、コンパクトかつ堅牢性の高い Equator™ でポンプ生産量を拡大

船舶用推進システム用ポンプのメーカー ZF Marine 社 (イタリア、Padua) は、測定工程を改善することでプロセスコントロールを効率化したいと考えていた。

商業用途、レジャー用途そして軍事用途のいずれであっても、何世紀にもわたって最も普及してきた汎用性の高い輸送手段のひとつである船舶。広く普及し、汎用性が高いからこそ、安全性、信頼性、効率性が海洋ドライブシステムでは重要視される。ZF Marine 社は、あらゆるタイプの船舶に使える推進システムの設計と開発に特化した世界的に展開する企業だ。高品質かつ革新的製品に定評がある。

同社は、市場から求められる高性能/ハイテク製品の生産を確実なものにすべく、製造プロセスを見直し、高効率な集中ワークセルを構築した。その一環として始動したのが、品質管理のパフォーマンスと速度向上化を目的とした ポンプ専用の 5 番セルでのプロジェクトだ。

生産効率の向上

製造プロセスには、測定作業によって制限を受けるリスクがある。また、実際に制限されていることも少なくない。こういった問題は ZF 社に限ったものではなく、製造を常時モニタリングしたいと考えているメーカーの多くでも同様だ。だが、工場のフロアに Equator を導入すれば、測定室で作業の流れが止まる事態を避けることができる。測定室にパーツを運ぶ時間や測定時間そのものを削減できるからだ。

Matterazzo 氏は以下のように続ける。「我々は、自社で使っている工作機械の購入元であるサプライヤに相談し、そして Equator に行きつきました。メカスパイダー、とも我々は呼んでいますが、我々のニーズにぴったりのソリューションです。Equator のおかげで非常に高い精度で製造をコントロールできます。設計がまったく違うパーツでも、工程内で測定したい形状や寸法を 1 台ですべて測定できるのです。従来の測定装置では特定の寸法は確認できますが、1 台ですべてを確認できるわけではありません。Equator は自由に構成を変えられるため、これまでの測定装置では測れなかった隠れた箇所など、ありとあらゆる形状を測定できます。また、同心度や平面度など、当社にとって重要な他の測定項目も測定できます」

カギを握る比較測定

Equator ゲージングシステムは従来のような絶対測定装置ではない。マスターとの比較測定を行うことによりパーツを検査する。なぜこの比較測定が生産とプロセスコントロールという面で大きなメリットとなるのか。測定室と加工現場では気温に差があることがほとんどであり、この温度差が加工完了から測定開始に至るまでの間にパーツに影響する。従来の測定装置を加工現場に持ち込んだとしても、その特性上、気温が急変する現場では周囲温度になじむまで時間がかかりすぎる。これ以外にも問題はある。熱変形は線形ではなく、形状やサイズによって違うため、測定の信頼性が損なわれる。そのため、従来の測定装置は恒温恒湿の測定室に置いておいたほうがよい。

ZF Marine 社製パーツを測定する Equator

そこで見つけたのがレニショーの Equator です。機能性が高く、精度も汎用性も高いシステムです。そのうえ使い方も簡単です。評価テストを経て、Equator は測定プロセスで中心的役割を担っています

ZF Marine 社 (イタリア)


これに対し、Equator は、従来の測定原理を進化させた加工パーツとマスターパーツの比較というプロセスを採用しており、温度変化に起因する差を相殺する。マスターパーツには量産品と同じ素材同じ加工方法で作られた現物マスターを使用する。そして同じ環境条件にするため、加工環境下で常に保持される。無駄がなくシンプルだが頑丈な構造、パラレルキネマティック機構そして革新的で高い繰り返し精度を誇る技術。これらが組み合わされた Equator は、他の測定装置よりも温度の影響を受けにくく、比較対象パーツの温度変化に対応する。

「まず、測定室の三次元測定機でマスターパーツを測定します。その後、マスターパーツを現場環境の温度にならし、Equator で測定します。この時 Equator の熱変形がリセットされ、加工パーツとマスターパーツの正確な比較測定ができることになります。マスターパーツを三次元測定機で測定した結果に比較測定で得られた差分を加味することで、図面公差と照合できるようになります。つまり、マスターパーツからの偏差を検出でき、三次元測定機での測定値を加味したうえで、測定したパーツが設計仕様からどの程度外れているかを確認できます」(Quality Manager の Gerardo Matterazzo 氏)

条件変化時にリマスタリング

「加工環境の条件が経時変化することを考慮し、リマスタリングに最適な間隔を約 2 時間と算出しました。測定間の偏差を 1%未満に抑えられます。リマスタリングには加工パーツの測定と同じ時間しかかからないため、プロセス全体の時間には実質的に影響しません」と、Matterazzo 氏は続ける。

リマスタリングに特別な時間がかからないため、温度変化を即座に補正でき、恒温の測定室で取得できるデータと同等のデータを取得できる。どんな理由でプロセスに変化が起こっても、Equator は常に対応し、プロセスコントロールを維持し続ける。生産時間に影響を与えない、条件変化に対応するようデザインされている。

だが Equator のメリットはこれだけではない。パーツ個々のプロセスコントロールを行えるだけでなく、測定対象パーツを簡単に切り替えたり、既存パーツの設計変更に対応するために測定プログラムを素早く切り替えたりもできる。さらに、Equator で取得した測定結果を使えば、工作機械の工具オフセットを更新したり、クローズドループ制御を構築したりすることも可能だ。

簡単な現場操作

Equator でパーツ測定する ZF Marine 社のオペレータ

Equator は直感的に操作可能だ。現場のオペレータには特別なトレーニングの受講も測定室での経験も必要ない。比較測定結果は Process Monitor の画面にグラフや表などで表示され、測定項目ごとの結果が色付きのバーでも表示される。この表示を見ながら測定項目の確認ができる。

ZF 社の生産スタッフは次のように述べている。「当社では Equator の現場操作についての簡単なトレーニングを実施しました。それだけで、リマスタリングから測定結果の理解まで、スタッフ全員ができるようになっています」

「効率化を図れるはずだったのです」とは、同社の Quality Manager である Gerardo Matterazzo 氏の言だ。「ただ、適切なツールを特定する必要がありました。そこで見つけたのがレニショーの Equator です。機能性が高く、精度も汎用性も高いシステムです。そのうえ使い方も簡単です。評価テストを経て、Equator は現在 5 番セルの測定プロセスで中心的役割を担っています」

ZF Marine 社 (イタリア)

定期再校正不要 = メンテナンスコスト削減

Matterazzo 氏は重要な点が他にもあると述べる。「ここまで述べた以外にもメリットはあります。マスタリングが校正の役割を果たすので、定期的に校正する必要がありません。そのため、ダウンタイムで生じる間接コストだけでなく校正にかかる直接コストも削減できます。レニショーが迅速にサポート対応してくれるため、メンテナンスのために作業を止めなければならないということがありません。コスト面だけでなく、現実の加工生産のニーズにも合致しています。非常に重要なことです」

Equator は、今後も ZF Marine 社で重要な役割を担っていくことが期待される。Equator は第 5 セルを中心に設備され、パフォーマンスを最大限発揮する予定だ。そして同社はさらに、Equator システムを導入できる生産プロセスの段階を模索している。ZF 社はまた、稼働中の工作機械にタッチプローブをレトロフィット (後付け) する意向も示している (レトロフィットはレニショーが提供するサービスである)。

Matterazzo 氏と theEquator (ZF Marine 社にて撮影)

背景

Equator は「パラレルキネマティック」と呼ばれる原理に基づいて動作する。パラレルキネマティックは、測定機や工作機械で採用されている一般的な直交軸構造よりも繰り返し精度が高く、慣性力とエネルギー消費が低いという特徴がある。

一般的に、直交する XYZ の 3 軸をもつ直交軸構造は、位置決めを確実に行うための剛性を確保するために重くなりがちである。しかし重量が増すと、負荷がかかったときに応答が遅れる可能性があり、ひいては構造に歪みが生じる可能性がある。加えて、軸が重いと、慣性力が非常に大きく、同じ加速度に対して必要な力が大きくなるため動作速度を十分には上げられない。動作速度に実質的に限界が課せられる。この慣性力によってわずかながら歪みが生じる。したがって、ずれによって (ずれを極めて小さく抑えたとしても) 測定に誤差が生じる可能性がある。

対照的に、Equator は、直線駆動軸 3 本が筐体上部のユニバーサルジョイントに取り付けられた構造になっている。各軸は、プローブのプラットフォームに直結されている。これによりプローブと駆動軸の距離が近くなる。シャフトはジョイントを介してモータにつながっており、ジョイントにより不要な荷重がかからない設計になっている。駆動軸にはリニアエンコーダが取り付けられており、正確な位置決めが可能となっている。これらすべての要素が組み合わさることで、表面には現れない動作が抑えられている。直線軸 3 軸 (P、Q および R 軸) の取付け向きは独特だが、動作コマンドは、一般的な XYZ 座標系に基づいて入力し、バックグランドで動作する数学的アルゴリズムによって変換される。

ダウンロード

  • ケーススタディ:  ZF 社、Equator™ ゲージングシステムで ポンプ生産を改善